アルコール駆動開発は、飲酒という手法ゆえに、様々な誤解を受けます。
最もよくあるのが、「アルコール駆動開発=飲みニケーション」という誤解です。
飲みニケーションとは、古い日本的なコミュニケーション手法のひとつです。お酒を飲みながらコミュニケーションを取ることで、殻に閉じこもる気質の多い日本人でも、お酒の力を借り、いわゆる「腹を割って話す」ことでコミュニケーションの醸成を図るというものです。
アルコール駆動開発は、コミュニケーションとは直接関係しません。アルコール駆動開発の主眼は、創造性と集中力を高めることにあります。もちろん、創造性が高められることにより、より良いコミュニケーションを行うことが可能になるかもしれません。また、大勢の人の前でプレゼンテーションをするときに、緊張をほぐすためにアルコール駆動開発の手法が役に立つかもしれません。しかしながら、それはアルコール駆動開発の本分ではありません。
アルコール駆動開発は酔っぱらって仕事をすることではありません。
酔っぱらう、つまり酩酊状態に陥ることは、アルコール駆動開発において特に忌避すべきことです。酩酊状態では、創造性が低下するだけでなく、計算能力や判断力も著しく低下します。このような状態で仕事をすることは、まさしく正気の沙汰ではありません。
アルコール駆動開発がターゲットにしているのは、素面(しらふ)状態と酩酊状態の間にある『発揚期』です。この状態では、計算能力や判断力は僅かに低下しますが、創造性の向上により、全体として作業効率が増加するのです。
アルコール駆動開発は、創造的に仕事ができるという点において楽しいのは事実です。しかし、一方で、アルコールを欲する身体欲求との戦いでもあり、苦痛とリスクを負っていることも事実です。全てにおいて快楽的であるというのは間違った考えです。