仕事中の飲酒を巡っては、国際労働機関を始め、各国政府が根絶に取り組んでいます。それは、アルコールが、作業の効率や安全性の観点で、負の効果しかもたらさないという経験的・統計的データに基づいたものです。
歴史的には、仕事中の飲酒は、過酷な労働環境の作業現場でよく見られました。有名な例としては、ボヘミアングラスで名高いチェコのガラス職人の例が挙げられます。ガラス職人は、2000℃で溶融したガラスを扱うため、作業中の水分補給が欠かせません。ビールがミネラルウォーターよりも安かったという事情もあり、ガラス職人たちはアルコール度数を低く抑えたビールを飲んで水分を補給していました。
伝統的にブルーカラーで多く見られた仕事中の飲酒でしたが、近年では、ホワイトカラーの飲酒が問題になってきています。イギリス保健省健康安全局の調査によると、企業の人事部長のうち17%が、組織における重大な問題として、アルコールの消費を挙げています[1]。また、オーストラリア国立健康福祉研究所の調査によると、連日飲酒をする人は、オーストラリア人の8.9%に達しています[2]。労働者の6.2%が「深酒」をしているというアメリカの調査もあります[3]。
さらに、2007年から世界を襲った金融危機の発信源のひとつ、ロンドンの金融街シティでは、アルコールや麻薬が蔓延しているという報告があります[4]。アルコールが世界に災禍をもたらした例と言えるでしょう。
このように、仕事中の飲酒に関しては、否定的な見方をされるのが現状です。そして、それは決して間違いではありません。「変毒為薬」もしくは、「毒を以って薬と為す」の言葉通り、自分が扱っているものが身体的・社会的に毒であることを認識した上で、アルコール駆動開発に取り組むことが重要なのです。